高校で数学をしっかり学ばないまま、大学で心理学を学ぼうとすると、統計学の授業で遅れをとってしまいます。心理学以外でも、経済学などの社会科学、自然科学の学科では、統計学が必修になっている大学が多いでしょう
統計学は、サイコロや身長・体重など、入口の敷居は低いのですが、数のとらえかたが複雑になってきます。
中等教育では主に、整数、分数、小数、虚数、有理数、無理数などの数字を操作することを学びます。統計学では「変数」といって、個によって異なる値を取る、あるいは、同じ個でも時間や状況によって異なる値を取るもの、に焦点を当てていきます。
例えば、毎日のように見聞きしている「気温」があります。地域によって、時刻や季節によって、あるいは、標高によって異なる値をとるため、これも「変数」です。それでは、気温はどのような変数でしょうか。
気温は、猛暑や酷暑のように、カテゴリーに分かれない
数直線上においてどの位置でも値を取りうる
足し算ができても、掛け算ができない (10度に0度をかけても0にならない)
このため気温は
量的変数であり、質的変数ではない
連続変数であり、離散変数ではない
間隔尺度であり、名義尺度、順序尺度、比尺度ではない
といったりします。さらに、学年が上がるにつれて、どうしても推測統計といって、仮説を検定するための方法を学ぶことになります。例えば、相関、回帰、t検定、分散分析などは、多くの卒業研究に必要になってきます。
これらを理解しないまま4年生になってしまうと、卒業研究でつまづいてしまい、留年、そして退学という、悲惨な結果になってしまうかもしれません。このため、1年生や2年生で必修となる統計学の授業は、評価基準を甘くできず、しっかり勉強しないと、単位が取れないようになっています。
これから心理学を学んだり、他の社会科学、そして自然科学を学ぶ大学生が統計学でつまずかないよう、「統計不安」という研究テーマもあります。日本の科学論文数の量と質が上がるよう、統計学でつまづかないよう、試行錯誤が続きます。
文:宮崎大学 HIKARI Lab監修 小堀修