マジカルラブリー、文章題は、状況を想像する
算数は嫌い、数学が苦手。
そんな言葉を誰でも聞いたこと、あるいは、言ったことがあるでしょう。算数や数学は、他の教科と比べると「セロリ」のように、苦手な相手とみなされることが多い科目と言えます。
前回のコラムでは、小学校低学年の子どもたちにとっては、算数が強い苦手意識の対象にならないだろうという仮説を立てました。
2年生から3年生にかけて「九九」を学びますが、これは韻を踏める日本語の特徴もあり、また、歌のように丸暗記するだけなので、つまづく子どもはそれほど多くないかもしれません。
それでは、いつ頃から、算数が苦手な子どもが増えていくのでしょうか。
小学校4年生から6年生にかけて、算数の抽象度が上がります。ケーキが16こあって、9こ食べてしまうと、いくつ残っているか、のように具体的に生活との接点があったものが、分数や小数、負の数など、小学生の日常生活では、あまり使うことのない操作が必要になってきます。
1/2で割るということは、2をかけることだ
これは「そういうものなのだ」と覚えてしまえば、すらすらと問題を解けてしまうでしょう。一方で、なぜ2をかけることになるのか、と突き詰めて考えようとしたり、なんだか違和感があって覚えづらかったりすると、今までの算数は、どこか「異次元の世界」のものに見えてきます。
もちろん本当に突き詰めて、日常生活との接点を探せばこうなるでしょう。
Aさんの家族は、みんな胃腸炎になってしまい、全員いつもの半分しか食欲がありません。ケーキが1つだけあります。このケーキはAさん家族の何人で食べられるでしょうか。
このように日常生活との接点を作れば、1÷1/2=2ということが感覚的に分かります。また、科学雑誌NEWTONでは、
負と負をかけると正になる
ことを、左右に伸びた道を進むこと、180度ターンすること、で日常的に理解できるよう解説していました。例えば1は1歩進むことで、マイナスの符号は180度ターンすること、とします。すると
-2 x -2
には負の記号が2つあるので、180度のターンを2回、360度ターンすることになります。すると、右を向いている人が、くるっと一回転して、そのまま4歩進む、というように理解できます。
中高生になると、虚数、三角関数、微分積分など、抽象度がどんどん上がり、日常生活との接点はさらに小さくなっていきます。
先生と同じ手続きを踏めば同じ答えにたどり着く、そういったおもしろさがあったはずなのに、どこかで理解が滞ってしまう、異次元の世界を想像できなくなってしまう、それが算数や数学に対する苦手意識の始まりなのかもしれません。
文:宮崎大学 HIKARI Lab監修 小堀修