Highly Sensitive Person (4): 心理学の始まりとHSP

October 10, 2022

Highly Sensitive Person は、もともと、感覚処理感受性 (sensory-processingsensitivity) が生まれつき高い人であり、その結果、「大きな音に敏感で、人間関係で疲れやすいが、内面が豊かな生活を送っている」という特徴を持っています。不安になりやすい、落ち込みやすいという負の側面を持っていますが、わずかな違いに気づくことで、内面生活が豊かになると、積極的な特徴を取り入れたことで、多くの人にとって受け入れられやすい、「まさに私のことだ!」と受け止められやすいものになったと推測できます。

 

実は、心理学の始まりと、この感覚処理感受性には、不思議な結びつきがあります。

 

みなさん、心理学がいつ始まったか、ご存知でしょうか?フロイトが対話による治療である精神分析を始めたときでもなければ、スキナーがハトを訓練して2匹で卓球ができるようにした時でもありません。

 

心理学の始まりは、19世紀まで遡ります。当時は心理学ではなく「精神物理学」と呼ばれていました。40度のお風呂と35度のお風呂の温度の違いは、私たちの皮膚感覚で分かります。ところが、リアクション芸人がやるような熱湯風呂だったら、80度と85度の温度差は違いに気づくことは難しいでしょう。

 

同じように、50gと40gの重さの違いはわかっても1000gと1010gの違いは、一部の人を除いて、判別することは難しいでしょう。このように、当時の心理学は、私たちの感覚器が持つ「閾値」を調べていました。

 

さらに歴史が進むと、主観的な評価、を対象に研究が始まります。例えばメトロノームの音を徐々に速くしていき、どこまで速くすると不快に感じるか。ライトをどこまで明るくすると、まぶしすぎて不快になるか、といったことを研究していました。

 

これらの研究は、人間一般に通じる法則を明らかにしようとしていました。「誰もが」この辺りで判別が難しくなる、とか、この辺りで不快に感じる、という点を明らかにしていました。

 

一方で、感覚処理感受性の理論は、人によって感覚処理の深さや強さが異なること、個人差があることを前提としています。この共通点と相違点を踏まえると、HSPのもうひとつの謎が解ける気がします。

 

その謎、私の違和感でもあるのですが、感覚処理感受性の高い人が、他人の感情を読み取りやすい、という仮説です。他人の感情を読み取るのは、物理的な刺激と比べて、とても複雑な処理が必要です。このため、画面に写った顔を少しずつ怒りの表情に変えていくと、HSPの人ほど、早い段階で「怒りの表情」であることに気づくか、といった実験がしてみたくなります。このようなHSPの特徴はまた、AIが人間の表情を読み取る際の参考になる可能性も秘めていると言えるでしょう。

 

もうひとつ、さらに専門的な話しになりますが、HSPの持つ弱点があります。それは、HSPな人たちは、いちどに多くの課題をこなすことが不得手だと定義していることです。過敏な人が複数の課題を苦手とするというのも論理にやや飛躍がありますし、同時に複数の作業をすること、つまり同時並行処理を妨害する要因はさまざまです。例えば、知能、気分の低下、自閉症スペクトラム障害がもつ認知の偏り、強迫性パーソナリティなども、同時並行処理をさまたげます。このため、HSPを持つ人が、他の人に比べて、多くの課題をこなすことが苦手かどうか、実験的な検証が必要となるでしょう。

 

文:宮崎大学 HIKARI Lab監修 小堀修

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