コロナと病気不安(2)-2011年に出現した病気不安

June 16, 2020

病気不安は、コロナが終息した頃に出現する、心理学的な問題です。時計の針を巻き戻すと、2011年ごろにも、病気不安が出現したことがありました。そうです。東日本大震災が(もちろん今でもその爪痕は残されていますが)終息した頃でした。

原子力発電所がメルトダウンしたことにより、私たちの行動に変化がありました。例えば

·      自分の住む地域の、放射能の強さを調べた、もしくは、注意してニュースを聞いた

·      放射能が身体に与える影響について調べた、もしくは、注意してニュースを聞いた

ハイリスクな人たち、例えば妊娠していた人は、より慎重になり

·      東北地方や北関東への旅行をキャンセルした

·      西日本に一時的に「疎開」した

·      野菜がどこで栽培されたかを気にした

·      レントゲン検査を避けた

 

といった行動の変化がありました。このような一時的な変化、つまり、放射能に用心するようになることは理解できます。ところが、多くの人たちが日常生活を取り戻した後でも、強い不安がなくならず、このような行動を繰り返す人たちもいました

·      放射能が怖くて、家の外に出られない

·      将来、妊娠したとき子どもへの影響を考えて、国産の野菜や肉が食べれない

·      何だか身体の調子が悪く、頭痛がしたり、お腹が痛くなったり、めまいがする

·      病院で検査をしてもらったが異常はないないけど、何だか体調が悪いので、検査を繰り返す

 

このように「平時」において、健康や病気に対する強い不安が持続することを、病気不安といいます。「精神疾患の分類と診断の手引第5版」に基づく名称は、病気不安症 Ilness AnxietyDisorder となります。正式な定義と診断基準は、こちらのリンクをご覧ください。

https://www.msdmanuals.com/en-jp/professional/psychiatric-disorders/somatic-symptom-and-related-disorders/illness-anxiety-disorder

多くの人が、日常を取り戻すにつれて、病気に対する不安が下がり、予防行動の頻度と程度が下がっていきます。病気不安を持つ人たちは、病気に対する強い不安が持続するため、予防行動の頻度と程度が変わりません。予防行動それ自体は自分や他人を傷つけるものではありませんが、その状況では過剰と思われるほどで、日常生活が送れなくなるほどつらくなってしまいます。

 

病気不安症の特徴は、このようにまとめることができるでしょう。

·      健康や病気に関して、強い心配が続き

·      病気のことが心配で、勉強、仕事、家事が手につかない

·      楽しみとやりがいが生活から奪われてしまう

·      診察や検査を繰り返すことで、必要以上に医療費がかかる

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文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修

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