ロボットは感情を持ちえるのか (8): 感情に影響する内的要因

March 24, 2021

私たちの健康を維持、増進する、ヘルスケアにおいて、ロボットが目覚ましく発展するようになりました。私たちの心のケア、メンタルヘルスのケアに、ロボットは参入できるのでしょうか。

 

政府から10万円が支給されて、うれしくなる人もいれば、悲しくなる人も、怒りを感じる人もいるでしょう。同じできごとが起こったのに、感じ方が異なるのはどうしてでしょうか。ひとつは、その人の置かれた「文脈」の影響があります。冒頭の絵をご覧ください。

 

上の台形も、下の台形も、全く同じ色ですが、背景が異なることで、上の台形は暗く、下の台形は明るく見えます。同じように、月に100万円の収入で生活する人と、月に20万円の収入で生活する人では、プラス10万円が感情に与える影響は異なってきます。

 

もうひとつの要因が、私たちの受け止め方、つまり「思考」です。政府から10万円が支給されたときに「たった10万円か。これっぽっちじゃ何も変わらない」と考えれば悲しい気持ちになります。「なんで私に支給するんだ。経済の復興とかいってるけど、病院で働く人や、コロナで失業した人にもっと手当てを!」と考えれば、怒りが込み上げてくるかもしれません。

 

このように、私たちの置かれた文脈や思考によって、私たちの感情が変化します。

 

それでは私たちの受け止めかた、思考が異なるのはどうしてでしょうか。私たちの外側にあるもの、内側にあるもの、さまざまなものが、私たちの考え方に影響します。まず、生まれ育った地域や親の影響によって、悲観的/楽観的な考えかたを身につけます。さらに、私たちの年収、学歴、健康状態、そして現在の感情も、私たちの考え方に影響します。さらに、生まれつき悲観的/楽観的に考えやすい、という傾向もあります。

 

ロボットが私たちと同じような感情を持つとしたら、相当に複雑なプログラミングが必要です。生まれた工場の要因、持って生まれたスペック、バージョンアップの履歴、影響を受けた他のロボット(育てのロボット、友達のロボット)、故障やバグの修復歴、これらが複雑に影響して、ロボットの思考が決まり、思考が感情に影響することになるからです。

 

驚いたことを大きく「リアクション」する人もいれば、驚いたかどうか他人にはわかりにくい人もいます。このように私たちは、「感情をどこまで表現するか」においても異なりますし、「自分の感情にどこまで気づくか」にも個人差があります。特に、自分の感情に気づきにくいことは「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれ、さまざまな心身の問題を引き起こします。

 

ロボットが感情を持っているかのように「見せる」ことは可能です。しかし、私たちと同じように「感じる」ためには、かなり複雑な操作が必要だということがわかりました。将来、ロボット自身がロボットをプログラミングして、人間と同じように、泣いたり笑ったりしながら成長し、老いを迎える時代が来るのかもしれません。

文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修 

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