前回は、病気不安になりやすい特徴を持っていた人たちが、健康に関する大きなできごと...例えばコロナのようなパンデミック、原子力発電のメルトダウン、医学研修、近親者の死...を体験することで、病気に対する不安がとても高くなるとお伝えしました。今回から、とても高くなった不安が「どのように持続」するのか、どうして不安が小さくなっていかないのか、について解説して行きます。
とても高くなった不安が持続するのは、このようなメカニズムだと考えられています:
1) 身体に生じる「雑音」に耳を済ませて
2) 「もしかしたら重篤な病気ではないか」と心配し
3) 診察、検査、自己点検を繰り返したり、 健康を損ないかねない活動を避けてしまう
今回は1) の体に生じる雑音について詳しく説明します。まず、過去1週間を振り返って、いくつの体内の変化を体験したか、数えてみてください。
1. 動悸
2. 腹痛
3. 喉の痛み
4. 喉がつまる感じ
5. 急な発汗
6. 関節痛
7. 身体の振るえや膝の振るえ
8. 頭痛
9. せき
10. 微熱
多くの人が、2-3つの体験があったのではないでしょうか。次の質問です。その結果、医療機関を受診したり、症状についてウェブで調べたりしたでしょうか。これもまた、多くの人が、何もしなかったと思います。
このような体内の変化は、ノーマルなものであり、気づかないこともありますし、気づいたとしても慌てふためくこともまれです。このため、症状や異変ではなく、体内の変化あるいは身体の雑音と表現しています。
一方で、このような体内の変化を「重篤な病気ではないか」と心配して、ウェブで調べたり、医療機関を繰り返し受診すると、病気不安に近づいていきます。
病気不安を持つ人も、持たない人も、なぜこのような雑音が体内から聞こえてくるのか、その理由を詳しく知らないかもしれません。次回、体内の変化が生じる仕組みについて整理してみます。
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修