私たちの健康を維持、増進する、ヘルスケアにおいて、ロボットが目覚ましく発展するようになりました。私たちの心のケア、メンタルヘルスのケアに、ロボットは参入できるのでしょうか。
前回は、ネコのおもちゃに電池を入れ、それが動き出すと、私たちの認識が「ぬいぐるみ」から「ロボット」にとって代わるという話をしました。どのように私たちの認識は変わったのでしょうか。
そのおもちゃが動いたからでしょうか。
強い風が吹いたり、大きな地震があれば、おもちゃも動きます。子どもが手にとっておもちゃを「生きているかのように」動かすこともできます。そして、私たちが「スイッチを入れた」とき、このネコは動きました。このような操作を、専門的に「制御する」と言います。簡単にいうと、私たちが動かしたいときに、自ら動いたことが、私たちの認識を「おもちゃ」から「ロボット」に変えたと言えます。
「制御」にはコントロールするという意味があります。ネコのおもちゃのスイッチを入れたら、時速40kmで動き出して、家中の家具をぶち壊して、壁紙をひっかき回し、おもちゃ自体も壊れる…なんてことは起こらないようになっています。
これは、私たち/おもちゃの製作者が「動かしたいように」、おもちゃを動かすことができます。小学生のカリキュラムに新しく導入されたプログラミングは、まさに「自分が動かしたいように動かす」方法を学んでいると言えるでしょう。
子どものおもちゃでも、ZoomやSkypeでも、私たちの思い通りに動作しないと、私たちはイライラします。製作者に報告したり、解決方法を相談したり、苦情を言ったりします。マイクロソフトのアプリは、エラーを起こすと、アプリが自動的に製作者に報告をするようにもなりました。これは、ロボットは私たちの期待どおりに動く、という想定があるためです。
少し話がそれますが、ロボットに関する3つの法、というものがあります。
ロボットは人間を傷つけてはならず (1)、人間を傷つけない限り人間の指示に従い (2)、これら2つの法と矛盾しない限りにおいて、ロボットは自分自身を守ろうとする (3)、というものです。
工場でも遊園地でも、頻繁に安全点検が行われるのは、(1) で定められるように私たちがケガをしないようにするためです。また、映画に出てくるターミネーターは、人間の指示がない限り、自分自身を消滅させることができません。これは (3) の法を遵守しています。軍事兵器など、ある人間の指示に従うことで別の人間を傷つけるロボットは、(2)の法を破っているのかもしれません。
今回は、私たちにとってロボットはどのような存在であり、どのような法を守っているのか、という話をしました。次回は「感情を持つ」とはどういうことかを解説していきます。
参考文献: Evans, D. (2003). Emotion:A very short introduction. OUP Oxford.
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修